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2012/04/03

エクスペリエンスデザインは可能か


前回のイノベーション始めました。(と言いたい) 〜イノベーションの始め方〜結局デザイン思考ってなに!? 〜もう一度考えなおしてみる〜では沢山のアクセスやツイートなどをいただきました。嬉しかったです。こうなると記事のハードルが上がってしまう気がするのではじめに言っておくと今回はアカデミックな分野の話が多いので結構退屈で何が言いたいのかも分からないような記事です。「定義」とか綿密な議論が好きな方には好まれるのかもしれないですが・・・とりあえず考えたことは書くことにしているので、許してくださいw 特に有用な情報は載っていません。 そしてごちゃごちゃです><
※長いので一番下に3行でまとめておきましたw

アカデミックで言われている ユーザーエクスペリエンス

アカデミックな分野でエクスペリエンスを語る際、Mark Hassenzahl と Noam Tractinsky はおそらく外せない。 特にHassenzahl の作った質問紙* (Attracdif 2 のような名前だったと思います...) はUX の分野でかなり重宝されています。
Tractinsky も2000年の論文で What is beautiful is usable (美しいものは使いやすい) という論文をヒットさせた、これまた有名な人。(この論文に関しては日本のUsability 界で有名なKurosu さんの論文を元に作られているのではあるのですが・・・)



そんな二人が共同で書いた論文、去年に読んだんですけど、その中のセンテンスが忘れられなかったので書いておきます。訳は下です。


it is not clear whether we can ‘design’ an experience.
Can designers exert enough control over all relevant elements in a way that a positive experience becomes certain?
Or do we rather ‘design for an experience’, that is, to take experiential aspects into account while designing, without being able to guarantee a particular experience.


我々が「エクスペリエンスをデザイン」出来ているかは定かではない。
「良いエクスペリエンス」を確かなものにする為に、それに関わる全ての要因をコントロールすることはデザイナーに出来るのであろうか?
あるいは、我々はむしろ「あるエクスペリエンスの為にデザイン」しているのであろうか?
つまり特定のエクスペリエンスを与えることを保証できないまま、エクスペリエンスを考慮しデザインしているのであろうか?

Design an Experience と Design for Experience

Design an experience (エクスペリエンスをデザイン)Design for experience (あるエクスペリエンスの為にデザイン)... 少しの違いだけども大きく違う。たしかこの言葉他にも使っている論文があったと思うんだけども見つからなかったのでこの論文を使いました。An Experience と Experience の違いも踏み込んで定義した人も居ましたがまぁここまで学術的になっても相当なマニアしか受け入れてくれないと思うのでまた今度w


User Experience(UX) ユーザーエクスペリエンスの定義

ちょっと脱線します。学術的なんで興味ある人は見てってください。
そもそもUX って何?って聞かれて、答えられる人はおそらく居ないはずです。ただなんとなくそのコンセプトは皆が掴んでいると思っています。最近ISO が定義を出しましたが、個人的には100%納得の行くものでは有りません。以下のようなものです。

ISO 
"A person's perceptions and responses that result from the use or anticipated use of a product, system or service" 
「商品、システム、サービスを利用するときや利用を予測した際に起こる人の知覚や反応」
Hassenzahl や Tractinsky はISOとは違う定義をしています。文中では以下のように記されています。

UX is a consequence of a user’s internal state (predispositions, expectations, needs, motivation, mood, etc.), the characteristics of the designed system (e.g. complexity, purpose, usability, functionality, etc.) and the context (or the environment) within which the interaction occurs (e.g. organisational/social setting, meaningfulness of the activity, voluntariness of use, etc.).

UXとは、ユーザの Internal state (予測、期待、ニーズ、モチベーション、ムード)と、デザインされたシステムの特徴 (難しさ、目的、ユーザビリティ、機能性, etc) 、またインタラクションが起こるコンテクスト (もしくは環境)  (団体の、社会的な設定、アクティビティの有用さ、利用の任意性、など) から起こる結果である

まぁISO の方も付け足しでいろいろなものを追加したりしているのですが・・・ちなみにここの「結果」はおそらく以前Hassenzahl が言った行動的な結果、気持ち的な結果の2種類を指すと思われます。
まぁなんやかんや言われているけども、人が何を経験するのか、そしてどんな要因がどんな結果を引き起こすのかって事がUX と捉えられていそうですね。

定義から見るUX と Usability の致命的な違い

UX をUsability の延長と考える人や、ユーザビリティをUX の一部とか言う人もいます。ただ一つ、気にしなくてはいけないのがUsability の定義。ニールセンとISO の定義が違うとかもあるけども、ユーザビリティはその定義の中に、「ある特定の人が」使用する際、という条件文があったはずです。「誰」を対象とするかによってユーザビリティは変わってくるからです。当たり前です。個人的にはそれがユーザビリティをどこまで行っても学術的に見ることの出来る所以でした。

UX もそうであるべき、と個人的には思います。デザイン思考など最近のはやりですがそのアプローチとして、ペルソナ的なものがあります。もちろんペルソナに限る必要は有りません。以前シリコンバレーに本社のある某デザインコンサルでバイトをした際にはペルソナではなく別の手法を使っていました。(それは言っていいのか分からないので隠しておきます)
大事なのは、ユーザがどのような人であるかを特定しているところ。エクスペリエンスとは人によって違うものであると考えられるからです。
(「ある特定の目的を持った人に」というユーザビリティの定義も同じくとても大きな違いだと思いますが今回は割愛)


エクスペリエンスをデザインすることは可能か?

そんな中でエクスペリエンスをデザインすることは可能なのでしょうか?ユーザにこう使って欲しい、ユーザはこう使うはずだ、ユーザはこう感じるはずだ、ユーザはこのような経験をするはずだ。デザイナーの持つその意図はどこまでユーザに伝わっているのでしょうか?

個人的には不可能だと思います。ただ、そのために努力することは必要だと思います。Design for Experience を支持です。

なぜかはわかりません。ただ、良い経験を与えることはできると思います。でもそれが意図通りに行かないのが面白いところなのかな、と。

そういった意味でエスノグラフィーとかを含むフィールドワークが大事になってきたり、プロトタイプとかが大事になってきたりストーリーをつくることが大事になってきたりする気がするんですよね。またユーザを限定することでかなり提供するエクスペリエンスをイメージできるようになるとも思います。それがいわゆるデザイン思考×マーケティング(そのうち記事書きます)かなと。だから僕はデザイン思考的な考え方が好きなんですきっと。ユーザを知ること、ユーザが何を求めているのか、ユーザがどう受け取るのか。ユーザに出来上がったものを渡すのではなく、ユーザと一緒にモノやサービスを完成させる、それがExperience をデザインするための一歩目な気がします。

だからこそ、プロセスをリニアにするのが変な気がするんです。まずこうして、次にこうして、こうすればうまくいくよ、なんてものがあるわけがないとすら思っています。不確実なものに対応するにはマニュアル通りではいけません。だからデザイン思考をプロセスとして確立するのも変だし、デザイン思考なんて駄目だーって言っている人も必要なんです。

おそらく日本に居る人は誰も中国にいる人の一部が、じゃがいもを洗うために洗濯機を使うことを知らないと思います。ジップロックの開発者は、携帯電話をお風呂のお湯から守るために開発したわけではないと思います。

分からないからこそ魅力を感じるんですよね。恋と同じですw モノづくりだって結局は人と人との関係。自分が相当に魅力のある人でない限り、自分から近づき、自分が人に合わせなくては関係は持てない。自分が想って欲しいように想ってもらえるなんて滅多にありません。

「人」に思い通りのリアクションを常にさせられるようになってしまったら、人を完全に理解してしまったら、人は人に興味を無くすとも思っています。だけど完全に知りたいと思うのが真理。
人を調べて人を理解して、その人のExperience までもを Design してしまうような「何か」を僕は作りたいと思っています。たとえそれが無理であろうと


付録
* 質問紙
2種類の知覚品質 (Pragmatic, Hedonic) と最終評価に分かれる質問紙である。


* まとめ
アカデミアで有名な2人の人の言った言葉が気になった
その2つはDesign an Experience と Design for Experience
著者はDesign for Experience 派

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