ヘッダー

このエントリーをはてなブックマークに追加

2012/07/29

ユーザを理解する 〜Needfinding という魔法の言葉の裏〜


デザインプロジェクトを語る際によくNeedfinding というフェイズの事が語られます。言葉はいう人によって違いますが、エスノグラフィックリサーチ、ユーザ理解、など様々な形で言われていると思います。要は「対象者が何を求めているか、何を望んでいるのかを知ろう」というフェーズのことです。
この魔法の言葉によって自分自身、このフェイズを経れば良いデザインにつながるのだと思っていたんですけど、もしかしたらニードファインディングって言葉自身に2つの目的がありそうなのにごっちゃにしていたので、クリアにするために記事にさせていただきます。



DESIGN PROCESS

イノベーティブなモノと良いUXを与えるモノって違うのかってお話 でも少し触れたように、IDEO はデザインプロセスを以下のように明示しています。
  1. Inspiration(ひらめきを得るプロセス)
  2. Ideation(概念構築のプロセス)
  3. Implementation(実現化のプロセス)
そして以前僕が参加したスタンフォード大学のME310のプロジェクトでは(もちろん文面上のように綺麗にはいかないという前提のもとあるとすれば)上図のようなデザインプロセスがある、という事を言っていました。

おそらく「デザイン思考」などの話の中で、「観察するんだよ」とか「インタビューするんだよ」って話しは、誰もが聞いたことがあると思います。

では観察、やインタビューから、何が出てくるのでしょうか?そこを考えてみます。

ユーザの特性とインサイト

インタビューや観察からユーザが何を求めているかを探り、それを実現することがイノベーションに繋がる、というのが自分の考えでした。
ただそれはおそらく「ユーザの特性」を把握することと「インサイト」を得ることをごっちゃにしていたからだと思うんです。「インサイト」はここでは「洞察:今まで知らなかった・着目しなかった面白いかもしれない観点」くらいで考えてください。たとえば昔結局デザイン思考ってなに!? 〜もう一度考えなおしてみる〜 の中で以下のIDEOが売上アップに貢献した駅構内の自販機の例を出しました。
もし、あなたが地下鉄にコンサルとして雇われ、「自動販売機(ジュースとか)の売り上げを上げて欲しい?」と頼まれたら、どうしますか?
(中略)
IDEOが採用したのは、全く異なる答えでした。
    「自販機の上に時計を置く」

IDEOが採用した調査手法は、地下鉄のホームへへばりつき、自販機を買う人、買わない人の行動をとにかく観察し続けること、でした。
すると面白いことに

  •     地下鉄を歩いている人は、電車の待ち時間をみんな気にしている
  •     自販機で物を買う人も、買う直前に(多分ジュースを飲む合間があるか)時間をチェックしている
なんてことが分かったそうです。
(中略)
そこで
    「じゃぁ、時間をチェックする時計と自販機をセットにして置いたら、購買が促進できるのでは?」
という仮説にたどりついたわけです。
結果、大当たり、と。
この自動販売機の例は行動を観察した結果イノベーションを起こした(と言ったら言い過ぎかもしれませんが、成功に導かれた)事例の一つだと思います。これは「自販機でモノを買う人も買う直前に時間をチェックしている」というインサイトから新たなものを作り出した事例です。

それでは「ユーザの特性」とはなんでしょうか?それはいわゆるペルソナ像であったり、「どんな人に対象のサービス、商品を使ってもらうか」ということを自分の中で、もしくはチームの中やクライアントと共有するユーザの事です。
こう言うことを考えている人が、こう言うことを求めて、こういう目的で商品・サービスを使う。こういう点を重視する、的なものです。これが今はおそらく「ニード」と呼ばれているものです。
これを勝手に「ユーザ像 」と呼びますが、これを考えることは非常に重要です。

ユーザ像例

例えばレストランをデザインするときに、そのレストランにどのような人が来るのか、ようはターゲットですけどそれを考えることが必ず必要となってきます。勘違いしてはいけないのが、アンケートなどはあまり当てにならないということ。好きなレストランは?というアンケートがあったとして、それの1番目の解答が「交通の便が良くて安いところ」だったとしても、それが全てのレストランにもちろん通用するわけがありません。恋人とデートをするようなレストラン、そういうモノを求めるユーザがターゲットである場合はそのようなユーザ像の人たちが何を求めているか、を知ることが重要であるからです。
それらを知るために、インタビューやユーザ理解は大事なのです。そしてそこに「何を求めるか」という観点を土台に、良いサービスを作り出すことはもはや必要不可欠な事です。

良い製品・サービスをデザインしていく上で

 ユーザ像が明確になり、ユーザがそこに何を求めているかを知ることは、確かにサービスを作り出す土台と成り得ます。ただそれらはおそらく、極端な例を出すとアマゾン奥地に住んでいる人などの自分があまり知らないユーザに対して大きく効果を発揮します。なぜなら彼らを理解している人は多くなく、それを知るだけで新たなチャンスが待っているからです。

ただ例えば日本人の20代に向けてそれを行う、となった時には気を付けなくてはいけません。なぜなら様々なことがされつくされ、いわゆる表面的なニーズというものはほぼ網羅して製品が作られているからです。つまり知られつくされたユーザ像に何か良いものを提供する上では「同じ土台の上に何を乗せるか」すなわちアイデアが大事になって来ます。

同じ土台の上に乗せるときには「アイデア」が大事になって来るのに対し、違う土台を探し出すためには「インサイト」が役に立つこともあります。インサイトは 今まで知らなかった・着目しなかった面白いかもしれない観点と言ったように、いままで目を向けなかった土台に何かを乗せることができる可能性を秘めているのです。

ユーザのニードは土地で、アイデアは家です。それぞれの土地には地震が多い、風が強いなどの特性があります。その土地の特性を理解して家を建てなくてはいけません。そして土地が混んでいたら、より高い、より目立つ、より質のよい家でなくては人は住みたいと思いません。
しかしその土地に他の家がなければ、シンプルな家でもその土地で1番の家になれるでしょう。もしかしたら一等地の中でもどこかにだれも住んでいないスペースもあるかもしれないのです。自販機の例は、新たな土地を発見した為、土地を発見した後のアイデア自体はシンプルなように思えます。
アマゾンの奥地人を理解するのもある意味で新しい土地の開拓ですが、日本の20代の表面上での理解などは現在ではほぼ「どのような家を既存の土地に建てるか」のガイドラインでしかありません。(もちろんそこから新たな発見などがあれば新たな土地に結びつくとは思うのですが・・・)
その土地で一番の家になるために・・・・


ニードファインディングだーっていってインタビューとか観察をすれば魔法のように何かいいものを作ることが出来る気がしていました。ただそれだけではダメで、アイデアが大事になってくるのか、土台が大事になってくるのか、中間か、そこらへんも整理できるといいのかなって気になって記事にしました。また尻つぼみですいません。。。

おまけ:インタビューと観察から得られるものの違い

ユーザ理解をする、インサイトを得るために、今回のポストではインタビューと観察を主に取り上げました。なんとなくですがこれが一番汎用性の高いものだと思ったからです。これらによって得られるものは多少違います。その違いを示したのが以下です

行動から何かを得るには観察が適しています。意識しているものを得るにはインタビューが適しています。このどちらもカバーしていないのが、意識していない心理的な部分です。ここを探るには、観察と行動の双方が必要となってくるでしょう。観察して、疑問に思ったことに関して問いかける。そうすると聞かれた側が意識せずとった行動の中から、なぜそれをしたのかを探ることが出来るからです。

そういった意味で、プロトタイプは重要だと思いました。コンセプトを行動的な面からでも心理的な面からも探ることが出来るからです。

0 件のコメント:

コメントを投稿